蚊帳と大麻(おおあさ)ヘンプと日本人

オーダー枕を福岡で作っている、よくねる寝具店の店主本徳輝樹です。と、言っていますが、オーダー枕を作っているだけでなく、色々な角度から安眠について考えていまして、枕、マットレス、ベッドパッドや羽毛布団など寝具からのアプローチは寝具店なんでもちろん致しておりますが、アロマセラピーや食などからのアプローチも致しております。毎月開催しているアロマワークショップや麹のワークッショップはその現れです。

安眠へのアプローチ「蚊帳」

最近もうひとつ安眠へのアプローチがました。「蚊帳」なんです。「かや」と読みます。知ってますか? これ、小さい頃に使ってた方と帰省すると祖父母宅で使ってた方、使った経験はないけど知っている方に分かれます。だいたい年代別に。私、現在45歳ですが、同世代はだいたい祖父母宅か知ってはいるに入ります。因みに私は「知ってはいる世代」です。それから、蚊帳は蚊よけのためのネットだと思っていたのです。まさか安眠のためのものなんて思ってもみませんでした。

蚊帳との出会いは今年の6月でした。あるお客様がご来店され、「お盆に孫が泊まりに来るから蚊帳が欲しい」とお尋ねに。お話を聞くと、「孫たちが泊まりにくると和室に布団を敷いて寝るのだが、クーラーの風が直接孫に当たってしまうのが気になる」それで蚊帳を思い出したとのこと。その頃私は、蚊帳はただの蚊よけネットだと思っていましたので、当店が取り扱うべき商品だとの認識など全くなく、「取扱いはないけど、取引先に聞いたら取り寄せできるでしょう。調べてお返事します」とお答えしました。というのも、日本で一番有名な寝具メーカーの西川は、蚊帳の行商から創まっているものですから、西川に聞いたら取扱いはあるだろうと思ってまして、早速、ベテランの担当者に聞いてみたところ、「ああ、蚊帳ですか~1品目だけあります。ただ、継続はしないと思います。」とのこと。

ですよね、蚊帳なんて今時使いませんからね。創業の商品だけど売れないならしょうがないですよね。じゃあその商品を送ってくださいと言いかけましたが、これではただの取り寄せ店ではないか、自分がないではないか、売れればそれでいいのか。と天使の本徳が悪の本徳を抑え込み、調べてみることにしました。

ある本との出会い

蚊帳は最近売れないから蚊帳ふきんなるものがあったり、しかもそれがヒットしている!? そうか蚊帳の産地は奈良が多いのか、蚊帳の素材はポリエステルや麻があうのかなどなど。だんだんと現状の蚊帳の位置が見えてきました。そんな中、1冊の本に辿り着いたのです。そこには、これこそ蚊帳の本質だ! と思われる著者の思いと情熱がありました。

孫にクーラーの風を直接当てたくないと、蚊帳を購入されたお客様の実際の和室

その本の著者が伝えていることは、「蚊帳は蚊よけだけでなく、ゆるやかに区切られた自分だけの安らぎの空間である」また「聖なる空間である」とも。蚊帳というのは本来、素材は麻であるべきで、ポリエステルなど化学繊維のものは蚊帳ではなく蚊よけネットだとも書いてありました。麻は、熱を籠らせないどころか、麻を通ってきた風は、そうでない風と比べて2~3°C低いと言われていうそうです。そして私がもっとも心を奪われたのが、信仰としての麻の歴史でした。

蚊帳と大麻と日本人

今年の10月に執り行われる天皇即位の礼、その後、新天皇が天皇として初めて行う神事である大嘗祭。そこでお召しになる着物の素材は絹ではなく麻。しかも麻の中でも、亜麻(リネン)や苧麻ではなく、大麻(おおあさ)・ヘンプなのです。しかも、その大麻を献上するのは、阿波の国(徳島)の三木家と決まっているそうです。因みに献上米は陰陽師が占いで決める仕来りだそうです。日本の歴史の奥深さにロマンを感じました。

大麻(おおあさ)・ヘンプは神社などで沢山使われています。伊勢神宮のお札には「神宮大麻」と書かていますし、しめ縄の素材お大麻。祓串、すずを鳴らすための縄、横綱の化粧回しなど沢山の場面で使われています。筆者が蚊帳は「聖なる空間」だと訴えているのには、そういった日本人と大麻の歴史があるからなのです。

蚊帳は不眠の救世主になるかもしれません。囲まれて安心感は人間の動物としての本能であり、海外でも天蓋はその役割として使われています。さらにその素材が大麻(おおあさ)・ヘンプであれば、「聖なる空間」として精神的な安定の意味もでてきます。実際に中に入って体感された方の多くが、「これは、落ち着く」「このまま眠りそう」など感想を話されます。私もある日の閉店後、蚊帳の中に寝転んで本を読んでいたところ、いつの間にか寝落ちしていました。

そう、言い忘れていましたが、本の名前は「蚊帳の中へようこそ」著者は三島治氏。蚊帳博物館の館長です。現在60歳代ですが、20年以上前のインターネット創成期に早くもホームページを立ち上げられ、蚊帳の普及に精魂入れて邁進されている方です。今年はシリコンバレーで蚊帳の普及活動をされるそうで、世界のIT企業で働く方々はきっと興味を持つでしょう。

蚊帳が持っている歴史、ちょっとスピリチュアル、そして「聖なる空間」を試しにいらしてください。店内には大麻(おおあさ)・ヘンプの蚊帳の中にジェルトロンマットレスを置いてお待ちしています。

店内の蚊帳。実際に入って蚊帳を体感してください

昔の蚊帳は重かったそうですが、変わり織のこの蚊帳は4畳半タイプで約2.3kgとすごく軽いです。洗っても型崩れしにくいので長年使えます。